「死亡保険って、いくら入ればいいんだろう?」
保険を考えるとき、みんなここで止まります。そして多くの人が「よくわからないから、とりあえず勧められた3,000万円くらい?」で契約してしまう。
実際、世帯主の死亡保険金額の平均は1,936万円(生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」)。みんな、なんとなく2,000万円前後で入っているんです。
でも、必要額は勘でも他人の平均でもなく、引き算で正確に出せます。
しかも計算してみると——共働き世帯の場合、必要額が思ったよりずっと小さい、なんならゼロになることも珍しくないんです。
元保険代理店で10年働き、そして今まさに夫の保険を検討している私が、必要額の出し方を最後までお見せします。ちなみに私自身は、死亡保険に入っていません。その理由も、この計算をすればわかります。
死亡保険の必要額は「引き算」で出る
考え方はとてもシンプルです。
死亡保険の必要額 =(遺族のこれからの支出)−(遺族のこれからの収入)
これからの支出
・生活費(2〜3割減)
・教育費の残り
・住居費(団信に注意)
これからの収入
・遺族年金
・配偶者の収入
・貯蓄・資産
・死亡退職金
足りない分だけ
保険で用意
ゼロ以下なら
死亡保険はほぼ不要
万一のあと、遺された家族がこれから使うお金(支出)から、これから入ってくるお金(収入)を引く。その差額、つまり「足りない分」だけが、保険で用意すべき金額です。
差額がプラスなら、その分を保険で埋める。
差額がゼロ以下なら——死亡保険はほとんど要りません。
「不安だから」ではなく「足りないから」入る。
これが保険の正しい順番です。
では、支出と収入をそれぞれ洗い出していきましょう。
ステップ①:これからの「支出」を洗い出す
遺された家族が、子どもが独立するまでに必要なお金です。
- 生活費:大黒柱が1人欠けると、世帯の生活費は2〜3割ほど減るのが一般的です
(食費や小遣いなどが減るため)。
今の生活費そのままで計算すると過大になります - 教育費:これから大学卒業までにかかる分。
子どもの年齢が上がるほど、残りは少なくなります。 - 住居費:ここが最重要ポイント。住宅ローンを組んでいる人は、団体信用生命保険(団信)でローンが完済されるため、住居費は以後ほぼゼロになります。
つまり、持ち家ローンありの世帯は、この時点で必要額が大きく下がります。一方、賃貸や完済済みでない場合は、家賃・住居費が続く前提で計算します
ステップ②:これからの「収入」を洗い出す
次に、万一のあとも入ってくるお金です。ここを見落とすと、保険を掛けすぎます。
- 遺族年金:公的な保障です。会社員なら「2階建て」で支給されますが、子どもが高校を卒業すると1階部分がなくなる「谷」があります。この仕組みは前の記事で詳しく解説しました
【収入保障保険とは?共働きにこそ向いている理由】 - 遺された配偶者の収入:共働きなら、ここが大きい。
配偶者の収入が続く分、必要な保障はぐっと小さくなります。
共働きが死亡保険の必要額を小さくできる最大の理由がこれです - 貯蓄・資産:預貯金やNISAなど、取り崩せる資産
- 死亡退職金・弔慰金:勤務先から出る場合があります(就業規則で確認を)
ステップ③:差額=必要保障額
支出から収入を引いた差額が、そのまま必要な保障額です。
- 差額がプラス → その金額を保険で用意する
- 差額がゼロ以下 → 死亡保険はほぼ不要。すでに公的保障・配偶者の収入・資産で足りている
計算してみると、多くの共働き世帯が「思ったより少ない」あるいは「ゼロ」に着地します。
驚くかもしれませんが、それだけ日本の公的保障が手厚く、共働きの家計が強いということでもあります。
【早見表】必要額のざっくり目安
代表的なパターンの目安です。あくまで概算モデル(遺された配偶者が生活費の一部を賄い、遺族年金・資産も加味)ですが、傾向がよくわかります。
持ち家・住宅ローンあり(団信でローン完済されるケース)
| 子どもの年齢 | 独立までの年数 | 必要額の目安 |
|---|---|---|
| 8歳 | 14年 | ほぼ0円 |
| 12歳 | 10年 | ほぼ0円 |
| 16歳 | 6年 | ほぼ0円 |
| 19歳 | 3年 | ほぼ0円 |
賃貸・住居費が続くケース
| 子どもの年齢 | 独立までの年数 | 必要額の目安 |
|---|---|---|
| 8歳 | 14年 | 約1,000万円 |
| 12歳 | 10年 | 約700万円 |
| 16歳 | 6年 | 約370万円 |
| 19歳 | 3年 | 約60万円 |
この2つの表を見比べると、はっきりわかることがあります。
団信(住宅ローンの完済保障)が効くかどうかで、必要額は天と地ほど変わる。
持ち家ローンありの共働きなら、死亡保険の必要額はゼロに近いことが多いんです。
そして賃貸でも、子どもの独立が近づくほど必要額は下がっていきます。
共働きの落とし穴:「家事・育児のコスト」を忘れずに

ここまで「共働きは必要額が小さい」と書いてきましたが、ひとつだけ見落としがちな点があります。
収入の少ない側(あるいは主に家事・育児を担っている側)に万一があったときです。
収入だけ見れば「稼ぎが小さいから保険は要らない」となりがちですが、その人が担っていた家事・育児を外注(家事代行・ベビーシッター・学童など)すると、月に数万円〜十数万円かかります。
この「見えないコスト」の分は、必要額に上乗せして考えましょう。
共働きは「2本の柱それぞれ」で必要額を計算する——収入だけでなく、家庭内の役割も込みで、という視点が大切です。
わが家の場合|私が死亡保険に入っていない理由
最後に、私自身の引き算の結果を。
私(妻)自身の死亡保障は、掛けていません。
上の計算をすると、私に万一があっても、夫の収入と資産、公的保障で子どもの独立までは足りる、という結論になったからです。
家事・育児コストの上乗せを考えても、まとまった死亡保険を掛けるほどの不足は出ませんでした。だから、入っていません。
一方で、夫の死亡保障は、大学の4年間だけ収入保障保険で備える予定です。
理由は前の記事に書いた「公的保障の谷」。
子どもが大学生になると遺族年金の1階部分が切れて、しかも一番お金がかかる。
この数年の谷だけが、わが家の引き算で「不足」として残った部分でした。
だからそこだけ、期間を区切って埋めます。
同じ夫婦でも、私は保険なし、夫は大学期だけ——必要額が違うから、掛け方も違う。
これが「引き算で決める」ということです。
不安の大きさで決めていたら、たぶん二人とも大きな保険に入っていたと思います。
よくある質問|死亡保険の必要額Q&A
Q. みんな、平均でいくらくらい掛けているんですか?
世帯主の死亡保険金額の平均は1,936万円です(生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」)。ただ、平均はあなたの家の団信の有無も、配偶者の収入も反映していません。
平均に合わせるのではなく、わが家の引き算で決める——これがこの記事の結論です。
Q. 必要額がゼロなら、本当に何も備えなくていいんですか?
大きな死亡保険は不要ですが、葬儀費用などの整理資金(目安100万円強)だけは別です。
もっとも、これは貯蓄で持っていれば保険である必要はありません。
生活防衛資金が確保できている家庭なら、新たに保険に入る理由にはならない、というのが私の考えです。
Q. 必要額は一度計算すれば終わりですか?
いいえ、必要額は毎年減っていきます。
教育費の残りが減り、子どもの独立が近づくからです。
子どもの進学などの節目と、年1回の見直しで十分。
「昔入ったまま放置している保険」こそ、今日の引き算で掛けすぎをチェックしてみてください。減額という選択肢もあります。
まとめ
- 死亡保険の必要額=(これからの支出)−(これからの収入)
- 支出は「生活費2〜3割減・教育費の残り・住居費(団信に注意)」
- 収入は「遺族年金・配偶者の収入・資産・死亡退職金」
- 共働き+持ち家ローンありなら、必要額はゼロに近いことも多い
- ただし家事・育児の外注コストは見落とさない
- 必要額は子の成長とともに毎年減る。だから保障も「減っていく形」が合う
必要額を出したら、次はどんな保険で埋めるか。減っていく必要額にぴったりの「収入保障保険」については、こちらで解説しています。
【収入保障保険とは?共働きにこそ向いている理由】
【元保険代理店スタッフが本音で教える!損をしない保険の入り方】
【医療保険はいらない?元保険代理店員が未加入を選んだ理由と公的制度】

コメント